無題
祖母が他界しました。
8人の兄弟姉妹から生まれてきた、多くの母方の従兄弟たちの中でも、一番僕のことをかわいがってくれていた祖母でした。
僕が祖母の家に行くたびに、名前を呼びながら大喜びで抱きしめてくれました。
その小さくなった骨っぽい体が、不思議にやわらかく感じていました。
年金生活者であるのに、遊びに行くたびになにかれと無心をしようとしてくれましたね。
受験に失敗して落ち込んでいるのを、学校なんかじゃない、その後が大切だと教えてくれました。そのとおりだったと感じています。
パチンコが大好きで、雨の日も風の日も、数少なくなった友達に会いにパチンコ屋に通って、3000円使って帰ってくる。みんなは煙たがっていたけれど、僕は一緒に行きたかったといまさらながら思っています。
家に人が集まるといつも、赤ん坊の頃に僕が祖母のおっぱいを吸ったことを、繰り返し繰り返し話していましたね。
あれはいただけなかった。彼女の前では勘弁してくれ。
すね肉のスープを作るのがとてもうまくて、夜遅くまでがんばって煮込んでくれていたっけ。
あの作り方を覚えておくのだった。
そんなおばあちゃん。
あなたのおかげです。
たくさんたくさんのありがとう。
さようなら。おやすみなさい。
樋口了一 「手紙」